名前のこと

うちの職場では皆、職員は下の名前で呼び合う。子どもからも、先生とは呼ばれない。こんなおばさんでも「○ちゃん」である。初めて下の名前で呼ばれた時、とてもとまどった。そしてとてもうれしかったのを覚えている。
 結婚して、当然の様に相手の名前になり、自分がいなくなった気がしてさみしく感じた。そして主人の苗字にも慣れた頃子どもが生まれて今度は「〜ちゃんのママ」「お母さん」と言われるようになり、すっかり「私」は消えてしまった。子どもが少し大きくなって子どもを通しての付き合いの他にボランティア等をするようになってからは苗字で「〜さん」と言われるようになり「私」は主人の苗字の「新しい自分」が生まれた気がした。そしてそれから・・・今の職場で、いきなり子どもの時呼ばれていた名が私に戻ってきた。自分の氏名を書く時や、母や親戚と話す以外は使われなかった下の名前が、今は職場に居る時は「私」を表す言葉として生きている。皆が呼んでくれる。結婚した時はあまり名前が変わったって、と深刻に考えなかったが、今自分の名前で呼ばれることがこれほどうれしいとは思わなかった。たかが名前、されど名前。この職場が好きな1つの理由でもある。