ジョギング

いつものコース。11月ごろまで毎朝富士山の見える坂のてっぺんですれ違っていた70歳と63歳のご夫婦も、週一度くらいものすごいスピードで走ってくる高校生の男の子も、講座でも聞いているのかウォークマンを耳に大きな声でドイツ語を口にしながら早足で歩く赤いパーカーのおじいちゃんも、ここのところの寒さか暗さか、会えなくてちょっとさみしい。ジョギングなんて一人きりの地味な運動、と思っていたがいつのまにか道々であいさつをかわすうちに、お互い名前もなにもしらないけれど一人で走っている気がしなくなっている。
普通の時間だと道ですれ違う人に挨拶なんてしない。でも朝の特別な時間は違う。たいていの人が「おはよう」「がんばれ」と声をかけてくれるし、私も全然しらない人でもトレーニングウェアの人には(出勤途中の人にはかけないけれど)挨拶をする。
特に坂の上であうご夫婦は、私が息を切らせて階段を駆け上がってくるのを「もうちょっとやで、がんばってや」と笑いながら上から呼びかけるおっちゃんと、「若いわね〜」といつもニコニコ寄り添うように走っている奥さんとは、ときどきは裾野まで広がる富士山をいっしょに見ながらほんのちょこっとお話をするほどになっていた。おっちゃんは大阪の高槻の出身で、胃を4分の3も切っていて、それでもジョギングは日課なのだそうだ。私も出身が堺だと話をし、中学生の息子がいるといったら目を丸くしていた。両親が離れている私にはおっちゃんの大阪弁が父の声を聞いているようで、ジョギングを続けて来れたのはこんな楽しみもあったからかもしれない。
だからここのところ顔を見ないことがすこし心配だ。もう少し暖かくなり、夜明けが早まるとまた階段の上から「ひさしぶりやな」の声がとんでくればいいな、と思う。

午前中、健康診断を受ける。血圧上が86、下が50。立ちくらみしませんか、朝起きられないことないですか、と先生に心配される。「朝5時半に起きて走っています。ごはんは毎食2杯です。元気です。」と答えると「まあ、体質なのかしらね」と言われる。自慢じゃないけど今まで血圧100越したこと、ほとんどない。